紙おむつ・軽失禁について
ここでは「紙おむつ」の使い方や処理方法等の知識から、安全・環境への取り組みまでQ&A形式でご紹介致します。
Q. 赤ちゃんは1日に何回位おしっこや便をして、量はどのくらいですか。
排泄のリズムは個人差や授乳・食事量により変わりますが、生後3ヵ月までは1日当り15~20回くらいで、 6~12ヵ月くらいになると10~16回前後になります。1回の排泄量は、新生児で1回5~10ml程度、 3ヵ月くらいになると15~30ml程度になります。
乳幼児は月齢の低いうちは排泄機能が未熟なため、しばらくの間は尿も便も1回の量は少なく、 回数が多くなります。機能が発達してくると一度にたくさんの尿を膀胱に溜めることができるようになり、 直腸のところで便のかたまりがつくれるようになって、回数も減ってきます。
Q. なぜ、おむつかぶれができるのでしょうか。その予防策はありますか。
おむつかぶれが発生するメカニズムは複雑ですが、基礎的な研究及び臨床での試験の結果、次のような要因が明らかになっています。
1.
おむつ内の湿度が高くなったり、温度が上昇することにより蒸れて皮膚がふやけた状態になる。
2.
ふやけた状態の皮膚は、おむつの摩擦、尿・便中の刺激物が作用し、皮膚が損傷を受けやすい。
おむつかぶれを予防するために
1.
おむつ内の蒸れを減らす
2.
皮膚をぬらしたままにしない
3.
柔らかな素材で皮膚への刺激を抑える
などが重要です。
排便後はおむつを早めに交換し、常に皮膚を清潔に保ち、かぶれが続いたとき、ひどいかぶれの時は医師の指示にしたがってください。
参考文献
おむつかぶれの発生機序と予防策について
・小浦豊美ほか:
小児看護19(7):846-850.1996
・山本一哉:
小児科34(8):1041-1045.1993
・松平隆光:
小児科診療60(増):196-199.1997
・岩田力:
小児科診療54(増):232-235.1991
・福岡和子:
小児科診療55(増):663-665.1992
・穴澤貞夫ほか:
エキスパートナースMOOK15
カラー版よくわかるスキンケア・マニアル:59-61,照林社1998
Q. 紙おむつは、布おむつに比べておむつかぶれしやすいと聞きますが、大丈夫ですか。
紙おむつが布おむつよりかぶれやすいという科学的根拠はありません。安心して紙おむつをお使いください。
おむつかぶれの原因は単一ではなく、多くの場合健康状態、季節的要因など様々な要素が関与します。 おむつかぶれを防ぐためにはおしりを清潔でムレない状態を保つことが第一で、紙おむつをこまめに交換することです。 紙おむつの場合は、おしっこをすばやく吸収できておしりがいつもサラサラしています。 交換の目安は次の通りです。
◆
新生児用・Sサイズは尿が出たらすぐ取り替える (1日10枚~12枚)
◆
Mサイズからは昼間は3時間おき程度、夜間は7~8時間置き程度(1日 7~8枚)
なお、紙おむつは、おむつかぶれの主な要因と考えられている「皮膚のぬれ」や「尿と便との混合」の影響を少なくするため、 素材や製品デザイン(構造)上、尿や便の水分を効果的に吸収する、おむつ表面への水分の逆戻りを防ぐ、などの各種工夫がなされています。
紙おむつの素材は、いずれも皮膚に対して安全なものを使用していますので、安心してお使いいただけます。 ただし、製品デザイン(構造)や素材の種類等の細かい部分についてはメーカーによって微妙に異なりますので、 場合によっては赤ちゃんの肌が体質的に個々の紙おむつと合わないという例もあるかと思います。 必要に応じて医師に相談の上、赤ちゃんの肌に合う紙おむつをお選びください。
Q. おむつかぶれがある場合は、紙おむつは使わない方がよいのでしょうか。
使っても差しつかえありません。紙おむつの素材は皮膚科の専門医の指導に基づき、 十分な調査・研究を行い皮膚に安全なものを使用しています。 また、常に清潔な状態で使用できるという点で紙おむつの使用は問題ありません。
ただし、紙おむつの製品デザイン(構造)や素材の種類等の細かい部分につきましてはメーカーによって 微妙に異なりますので、場合によっては赤ちゃんのお肌が体質的に個々の紙おむつと合わないという場合も 考えられます。紙おむつ使用中におむつかぶれが起こった場合には、一度、別の種類の紙おむつに変えて 様子をみていただくのも方法かと思います。
なお、症状が続く場合や、ご心配な点がございましたら、医師にご相談ください。
Q. 紙おむつを使うと股関節脱臼になりやすいということはありませんか。
紙おむつが原因で股関節脱臼になる心配はありません。
紙おむつは、赤ちゃんが足を自由にのびのびと動かせ、股関節脱臼にならないように考慮された 「股おむつ型設計」になっています。
股関節脱臼とは、生まれつき足の付け根の股関節がはずれている状態です。 女子に多く、男子の約10倍の頻度で起こります。完全にはずれている完全脱臼のほか、 はずれかかった状態にある亜脱臼、股関節の屋根にあたる部分の発育が悪い 股関節臼蓋(きゅうがい)形成不全の3種類があります。
生まれたばかりの新生児を仰向けにして寝かせてみると、股、ひざを強く曲げ、しかも股を開いて、 ちょうどカエルのような格好をします。これが新生児にとって自然で無理のない姿勢です。 この自然な姿勢を妨げるおむつや衣料を使うことで股関節に過重な負担がかかり、 脱臼の引き金になるといわれていたことがあります。
昭和30年代の「三角おむつ」(腰まで包んで足を無理に伸ばすので負担がかかる)の時代は 股関節脱臼になる乳幼児が多くいました。しかし、月齢の小さな乳幼児が使うテープ型紙おむつは、 股関節脱臼にならないように、乳幼児が足を自由にのびのびと動かせるように配慮された 「股おむつ型設計」になっています。
Q. 紙おむつを使うとおむつ離れが遅くなるようなことはありませんか。
紙おむつであるからということで、おむつ離れが遅くなることはありません。
おむつ離れは幼児によって時期の早い遅いはありますが、それはおむつによるちがいではありません。
紙おむつは、ぬれてもサラサラしているので、幼児にとって不快感がなく、おむつ離れが遅くなるのではないかと 心配される方がいます。しかし、母子愛育会保健センターの実験で、一卵性双生児のひとりに布おむつ、 もうひとりに紙おむつを使用し経過を見たところ、おむつ離れの時期には違いはありませんでした。
おむつ離れは幼児の大脳や体が成長して排泄のしくみが整えば、ごく自然にできるものです。
お母さんが子供の排尿行動に注意していること、神経質になって強制したり叱ったりしないこと、 トイレやおまるで排尿出来た時には、心からほめてあげるなどで、子供自身に随意に排尿する感覚が培われます。
Q. おしっこをした後の紙おむつがピンク色(青色)になっています。どういうことが考えられますか。
子供の月齢が小さな時は、おしっこの色も薄く臭いもほとんどありません。離乳食が始まると食べたもの、飲んだものの影響で色が濃くなり、臭いも変化してきます。
おむつに色がついて見える原因としては、おしっこ自体に色がついている場合の他、紙おむつに印刷されている絵柄が透けて見えたり、おしっこをすると色が変わるラインの色が透けて見えたりすること等が考えられます。
明らかにおしっこ自体に色がついている場合は、一度かかりつけの医師にご相談いただくことをお勧めします。
おしっこがピンク色の場合
夏場や暑熱時に、尿中の尿酸塩が析出し赤褐色に見える場合や、便中に存在するある種の色素産出菌(サッカロミセス)による場合、また、血尿などによる場合などが考えられます。
おしっこが青色の場合
「緑膿菌感染尿」や、「青いおむつ症候群」と呼ばれる疾患によるもの等が考えられます。
参考文献
紙おむつがピンクになる現象について
・後藤稠ほか編:
最新医学大辞典(第1版),p6,医歯薬出版 1987
・南山堂:
医学大辞典(第17版),p7,南山堂 1990
・小島富三ほか:
円赤医38(1/2) 11.1986
紙おむつが青色になる現象について
・後藤稠ほか編:
最新医学大辞典(第1版),p6,医歯薬出版 1987
・南山堂:
医学大辞典(第17版),p7,南山堂 1990
・滝田齊:
日木臨床(別冊先天代謝異常症候群,下巻),574-575.1998
・相沢良夫, 戸田剛太郎:
内科81(6):1246.1998
共通
・上田英雄ほか編:
内科学(第五版),1193-1194. 1991
Q. トイレトレーニングはどのくらいから始めたらよいのでしょうか。
トイレトレーニングは2歳~3歳くらいから始められる方が多いようです。排泄の生理的な仕組みは、1歳を過ぎてからようやく整い始めます。その後、発育とともに、徐々に「おしっこが貯まった」感覚を「意識」できるようになります。個人差がありますが、 スタートの時期の目安は、ひとりで上手に歩けること、大人(保育者)のいうことが理解できること、 おしっこの間隔が2時間位あくことです。
トイレトレーニングの方法は乳幼児がもじもじするなどのサインを見逃さず、おしっこをさせてみることです。そしてタイミングよく排泄できたら誉めます。
おむつ離れまでの段階には尿や便が出たことを知らせる「告知」の時期があり、やがて尿などのたまった感覚が分かるようになると、出す前に「予告」ができるようになります。完全に予告できるようになるとおむつ離れです。
Q. おねしょは何歳くらいでなくなるものでしょうか。
おねしょは自然になくなります。4~5歳まで続いても心配はいりません。
おねしょは眠っている間につくられる尿量が多すぎて膀胱からあふれてしまう現象です。 成長して抗利尿ホルモン(眠っている間に尿をつくるのを抑えるホルモン)が多く分泌されるようになれば、 自然になくなります。
あせらず、叱らず幼児の成長を見守り、子供の不安と緊張を取り除くことが大切です。 4歳以降に、それまでにしなかった子供におねしょが始まったときは、環境の変化などで 不安や緊張がある場合もあります。